この記事で紹介するのは、微分方程式の中でも1階微分方程式と呼ばれるものです。
微分方程式の中でも、特に「基本的」となる考え方が数多く出てくるので、重要度の高い範囲になります。
式だけを追っていてもしょうがないので、解き方の形ごとに例題を取り上げて解説していくので、それぞれ不安なところがあればしっかりと手を動かして解くようにしてください!
それでは、いきましょう!
目次 (クリックでジャンプ)
変数分離形は、変数を分離してから解く
変数分離形とは、以下のような形の微分方程式です。
$$ y’ = P(x)Q(y) $$
☝️右辺が $x$ のみの関数と、$y$ のみの関数に分離できる!
解き方です。
両辺を$ Q(y) $ で割って、
$$ \frac{1}{Q(y)} \frac{dy}{dx} = P(x) $$
とした後で、両辺を $ x $ で積分すると…
$$ \int \frac{1}{Q(y)} \frac{dy}{dx} dx = \int P(x) dx + C $$
となります。ここで、左辺は積分変数を $ x $ から $ y $ に変換する置換積分とみなせるので、
$$ \int \frac{1}{Q(y)} dy = \int P(x) dx + C $$
となります。
このように、
- 変数を分離して
- それぞれを積分して解く
やり方を、「変数分離形」と言います!
Q. 微分方程式 $ y’ = -2xy $ を解け
A. 変数分離形であるので、まずは変数分離をすると、 $ y \neq 0 $ で
$$ \frac{1}{y} \frac{dy}{dx} = -2x $$
と変形し、両辺を積分して
$$ \log{|x|} = -x^2 + C $$
これを $y = $ の形に直すと、一般解 $ y = C e^{-x^2} $ が求まります。 ($ C = ±e^c $)
これからの微分方程式の解き方は、この「変数分離形」に帰着させるものも多いので、しっかりと解き方を覚えておきましょう!
同次形は、$ \frac{x}{y} $ を新しい変数にする!
お次は、同次形と呼ばれるものです。何が同次かというと、0 でない項の次数が全て同じと言うことです!
形を見ていきましょう。
$$ y’ = f(\frac{y}{x}) $$
パッと見て形が掴みにくいかもしれませんが、慣れればわかると思うので、先に進んでみましょう。
解き方です。
$$ u = \frac{y}{x} $$
によって、変数を1つ減らすことができる。上の式を用いると、$ y’ = \frac{d}{dx} (ux) = u’x + u $ であるから、元の式は、
$$ u’x + u = f(u) $$
と変形できます。
これは、先ほどやった「変数分離形」の形になっているので、解くことができるようになっています。
それでは、例題を見ていきたいと思います。
少し長いですが、変数分離形として解くところまでやっていくのでじっくりと頭に入れてください。
Q. 微分方程式 $ 2xyy’ – x^2 + y^2 = 0 $ を解け
A. 「変数分離形」でないことはわかると思います。まずは変形してみましょう。
$$ y’ = \frac{x^2 + y^2}{2xy} $$
$$ = \frac{1 + \frac{y}{x} ^2}{2 \frac{y}{x}} $$
より、これは先ほど見た同次形のパターンだとわかります。
これより、定石通り $ u = \frac{y}{x} $ とおきます。$ y’ = u’x + u $ より、式全体は、
$$ u’x + u = \frac{1 + u^2}{2u} $$
となります。
これより、変数分離形の形になったので、式を変形して
$$ \frac{2u}{1-u^2} u’ = \frac{1}{x} $$
となり、両辺を積分すると、
$$ \int \frac{2u}{1-u^2} du = \int \frac{1}{x} dx $$
$$- \log{|u^2 -1|} = log {|x|} + C $$
となって、これより
$$ x(u^2-1) = ±e^{-c} $$
を得ることができます。
さて、途中で $ u = \frac{y}{x} $ と置いたので、これに代入して $x $ と $y$ の式に直すと、
$$ x^2 – y^2 + 2Cx = 0$$
となります。($C = ±\frac{e^{-c}}{2}$)
同次形にしておけば、「変数分離」の問題も一緒に出せるので、テストではこの形が結構出る気がしています。
対策は必須です。
線形微分方程式の場合は、特解を求める必要がある
1階微分方程式
$$ y’ + p(x) y = q(x) $$
を考えます。
$q(x) = 0 $ の場合を「同次方程式」と呼び、$q(x) \neq 0 $を「非同次方程式」と呼びます。
こういう方程式の場合は、
- まず、同次方程式の形を解いて
- そのあと非同次方程式の特解を求める
という順番で求めていきます。
まず、$ z’ + p(x)z = 0 $ を解く。
変数分離形であるので、
$$\frac{1}{z} dz = -p(x)dx $$
と変形して、これらを積分することで、
$$ \log{|z|} = – \int p(x)dx + c $$
を得る。この方程式の一般解は、前に見た通り $ z = Ce^{-int p(x) dx} $ である。
次に、非同次方程式の一般解を求める。一般解は、
同次方程式の一般解 + 非同次方程式の1つの特解
となっている。
特解は1つ求めれば良いので、ここでは「定数変化法」を用いて作る。
先ほどの同次方程式の答え$ z = Ce^{-int p(x) dx} $ において、定数の C を $x$ の関数($a(x)$)として表すことができれば、
- 同次方程式の解を満たしながら
- 非同次方程式の特解を見つけることができる
(もし2. がなかったら、求める過程において $a(x) = C(定数)$ になる)
これによって、「非同次方程式」の一般解を得ることができる。
ずいぶんややこしいので、まずは例題から見てみるのもアリかもしれません。
それでは、例題いきます。
Q. 微分方程式 $ y’ -2y = 2x $ を解け
A. 同次方程式 $y’ – 2y = 0 $ の一般解は、$ y = Ce^{2x} $ はすぐに求まります。
定数変化法を使って、$C$ を$ a(x) $ で置き直すと、$ y’ – 2y = ( a'(x) e^{2x} + 2a(x)e^{2x}) – 2(a(x)e^{2x} )$ $ = a'(x) e^{2x} = 2x $ より、 $a'(x) = 2xe^{-2x} $ であるので、両辺をxで積分すると
$$ a(x) = \int 2xe^{-2x} = -xe^{-2x} + \int e^{-2x}dx $$
$$ = -(x+\frac{1}{2})e^{-2x} $$
したがって、特解は $ -x – \frac{1}{2} $ と求まる。求めたかった一般式
$$ y = Ce^{2x} – x – \frac{1}{2} $$
が求まります。
ぜひ最初の式に代入してみてください!
非同次方程式の一般解は、「パッとみてわかる」という人はそれを放り込んでしまっても大丈夫です!
慣れるとだんだんわかってくるので、数をこなしましょう。
完全微分方程式
完全微分方程式とは、以下のような条件を満たす微分方程式のことです。
$$ P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0 $$
を満たす方程式において、
$$P(x,y) = \frac{ \partial F}{ \partial x} $$
$$Q(x,y) = \frac{ \partial F}{ \partial y} $$
となる$ F (x,y) $ が存在するとき、元の式を完全微分方程式と言います。
微分方程式が完全微分方程式であるための必要十分条件は、
$$ \frac{\partial P}{\partial y} = \frac{\partial Q}{\partial x} $$
が成り立つことです。
解き方は、以下の通りです。
与えられた式が完全微分方程式の場合、以下のように変形ができるので、
$$ P(x,y)dx + Q(x,y)dy = \frac{ \partial F}{ \partial x} + \frac{ \partial F}{ \partial y} y’ $$
$$ = \frac{d F}{d x} = 0 $$
これを $ x $ で積分すれば、一般解
$$ F (x,y) = C (Cは任意定数) $$
を得る。
これも例を見た方がわかりやすいという人がいるかもしれないので、サクッと例題を載せておきます。
解いて確認してみてください。
Q. 微分方程式 $ y + x^2 + (x+y)y’ = 0 $ を解け
A. $ P(x,y) = y + x^2 $、Q(x,y) = x + y $ とおくと、
$ \frac{ \partial P}{ \partial x} = 1 $ , $ \frac{ \partial Q}{ \partial y} = 1$
となるので、与式は完全微分方程式である。したがって一般解を求めれば良い。
$$ \frac{ \partial F}{ \partial x} = P(x,y) y + x^2 $$
の両辺を $ x $ で積分すると、
$$ F(x,y) = xy + \frac{x^3}{3} + g(y) $$
ここで、 $ g(y) $ は任意の関数であるが、これを
$$ \frac{ \partial F}{ \partial y} = Q(x,y) = x + y $$
に代入すると、
$$ \frac{d g}{d y} = y $$
となり、$ g(y) = \frac{y^2}{2} + C $ と求まる。したがって、一般解は
$$ xy + \frac{x^3}{3} + \frac{y^2}{2} = C $$
となる
完全微分方程式については、パッとみてわかれば良いのですが、もしわからないくても、「こういう解き方があったな…」と覚えておくとテストなどでは役にたつはずです。
僕も、完全に暗記しているわけではありませんが、ちょっと進めていくうちに思い出して、最終的に代入して
と確認する程度に覚えています。
最後に:形ごとに解き方を覚えよう
以上がとりあえずの、1回微分方程式の解法のまとめでした。
例題と一緒に覚えてもらうとより理解がスムーズになると思います。
最初にも言ったように、まずは各パターンの解法の型を覚えることが先決です。とにかく体で覚えて、解けるようにしておきましょう!