図書館のイベントで感じた、迷った時の『本の選び方』

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図書館のイベントで、こんなものがあった。

その名も、「Packaged Books」。

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こんな風に、展示本は全て包装されていて、タイトルはわからないようになっている。本についているタグから中身を想像し、直感で本を借りてみよう、というものである。

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面白い試みだなと思って、2冊借りてみることにした。この記事は、その本と、この企画から感じた、「本の選び方」についてのエッセイ。

 

包装を開けると…

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僕が借りた本についていたタグは、

「キュイジーヌ あい」

「こえ あい」

さて、開けてみよう。

 

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ドキドキ…

 

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ふ…フランス語?

 

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おっちゃん出てきたー!

 

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フランス語の手帖 辻 静雄

“キュイジーヌ あい” から出てきたのは、こちらの本。

 

食べ物とか、料理とかじゃなく、わざわざキュイジーヌ といってきたのだから、フランス料理か、もしくはピンポイントに、ブリヤ=サヴァランの美味礼讃かと思っていたが、やはりフレンチ関係の本であった。

(cuizinue は料理と食事の意味で、フランス語から派生した英語)

 

もう一冊、”こえ あい” はこんな本。

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書評

せっかくだから、書評というか、軽い感想を書いてみることにする。

 

フランス料理の手帖

この本は、辻 静雄がフランス料理について書き記した、まさに「手帖」と言えるような内容の本。それぞれ「キャビア」や「チョコレート」などの食材のこと、それに「料亭」、「お勘定」などしょくに関することが章立ててあって、それを辻氏が実体験を交えながら紹介してくれたり、解説をつけてくれたりする。

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面白かったのは、料理を料理だけで完結させることなく、人や時代など様々なものと絡めて語ってくれている点である。彼の語る食には、いつも周りに人の語らいがあり、音楽があり、笑顔があった。

この本は、単なるフレンチという料理のジャンルに収まらず、食、さらには人生という大きなものに対して綴られているように思う。

 

声の資本主義

先のフランス料理の手帖がエッセーだとしたら、こちらは評論文。しかも、国語のテストになりうるレベルでオカタイ。

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内容としては、電話やラジオなど、声にまつわる機器や我々の社会がどのようにして発展し、人々はそれをどのように受け入れて行ったのか、というようなことが書かれている。

断言しておくと、この本はおそらくここに書評を書くという目的がなければ読破は難しかったということだ。もし、音響機器に興味があるか、睡眠導入剤の代わりになるものをお探しなら手に取ってみるといいかもしれない。

 

 

このイベントを通じて感じた、本の選び方

自分の読む本というのは、なんだかいつも同じようなものだなぁと感じることが多い。

例えば、僕だったら推理小説恋愛小説などか、もしくは実用書、ビジネス書が大半である。

最近読んだ本だったら、こんな感じ…

 

いぶきが最近読んだ本

米澤穂信と古典部

何者

対岸の彼女 (文春文庫)

でも、時には新しい本を読んでみたくなる。

というか、「新しいジャンルの本も読んだほうがいいんじゃないの?」という思いが首をもたげてくるのである。

 

だって、大学生なんだから。古典や海外の文豪の本を読んで置かないと、漱石とか鴎外とか、ハイデガーとかモームを読まないままに社会人になってしまう。そんなのは、味気ないというか、もったいない気がしてならない。

でも、そうまでしてそういったオカタイ本を読もうとしないのにはいくつかの理由があるように思う。

 

まずは、そうした本が単純に面白くないこと。

今の時代には、それこそたくさんの娯楽がわんさかあるというのに、なんでわざわざそんなホコリをかぶったような本を引っ張り出さなくちゃいけないんだという思いがある。

 

こういうと、「古典は人生を豊かにするんだ!」という、いかにも教科書どうりの反論をあげてくる人がいるかもしれない。でも、そう反論してみると、色々まずいことが起きてくるように思う。

だって、他の娯楽も人生を豊かにするはずだから。ゲームだって、映画だって、何かしら娯楽となっているものはきっと芸術の端っこの成分くらいは含んでいるはずだし、その人にとっては深い意味があるかもしれない。

 

だから、古典でなくては、本でなくてはいけないという理由にはならない

 

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本を読むには、柔らかい朝の日差しがいいと思う

 

話を戻そう。

オカタイ本を読もうとしない次の理由として、のっけから読む本の選択肢に入れてないことがそれだ。そして、今回僕が一番伝えたいのはそのことである。

つまり、僕は普段「そもそも、古典なんか読まないや!」という気持ちで今までは見向きもしなかったのである。だから、僕にとって娯楽たりえる、面白い本に巡り合うことができなかった。

 

しかし、本当に古典文学やオカタイ本の中にはつまらない面白くないものしかないだろうか?と考えると、そんなことはないと思う。

 

実際に読んでよかったなと思う、そういう本の中に、宇治拾遺集がある。鎌倉時代~室町時代あたりの、庶民の言い伝えや怪奇譚をまとめた本で、いわゆる古語で書かれている。

最初は、古典の勉強のつもりで読んでいたのだが、途中からそれそっちのけで読んでしまっていた。

読みやすくもあり、有名な舌切り雀やたんこぶ爺さんの原型のお話などがありとても興味を引かれた。

 

他にもある。親の本棚に置かれていた田山花袋の「布団」。これも漢字仮名交じりというか、ムツカシイ言葉で書かれていたのだが、子供ながらに記憶に残っている。

こうした新しい本当の出会いをもたらしたのは、ほとんどが偶然に近いところが大きい。たまたま、その本を手に取ってみたら「お、いいじゃん!」と思うのである。

 

今回の本にしてもそうだ。フランス料理の手帳は、少なくとも、フランスに行ったら鴨のオレンジソースにを食べて見たいな、辻静雄の本を他にも見たら借りてみようかな、という興味を持たせるくらいには心に残った。

 

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フランス語で書かれたお勘定。 フランス料理の手帖 より

 

では、なぜこうした新しいジャンルにチャレンジしようという精神がいつも頭にないのか。それは、往往にして新しい出会いには失敗がつきものであるからだ。

今回のイベントでいうと「声の資本主義」は完全に僕の趣味に合わなかった。

 

だからためらい、いつも読んでいる、失敗の少なそうな本を選ぶ。

けれど…ね。

 

新しいものと出逢う

 

新しいことをする、新しいものと出逢うということは、少なからず痛みを伴う。

新学期だったり、引っ越しだったりのドキドキという胸の高鳴りの中には、高揚と不安が混じっている。

 

だから、これを避けようとする気持ちもわかる。だって、誰だって不安は嫌だから。

でも、たまにはドキドキを体験してみるのも良いと、今回の本を借りて思った。フランス料理についていろいろな知識を蓄えることができたし、料理というものについて考えるきっかけになったし。

電気の本は…新しい語彙が少し増えたくらいかな(笑)

 

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結論として思ったことは、新しいものとの出会いも、たまになら悪くない

 

だから、本の選び方を迷ったら、ぜひ目をつぶってランダムに選んでみるとか、背表紙と気になるタイトルだけを元に決めたりとかしてみてほしい。

そこには、自分の合わない本もあるだろうけど、きっと新しい興味や知識をあなたにもたらしてくれるから。

 

あとは、人に選んでもらうのも良いと思う。本って、読む人によってジャンルが違うから、なかなかプレゼントなんかに渡しづらいところがあるけど、そんなの木にする必要あんまりないな、むしろワクワクして良いかなと思った。

たかだか本のイベントから、こんなことを感じた冬の終わりだった。







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