この前、大学の授業で「研究とは何か?」という話題になりました。
その時に、先生が納豆を例にして説明してくださったのですが、それがとてもわかりやすかったので記事にしたいと思います。
この記事を読んでいるあなたはもしかしたら「研究って何?」とか「大学の研究室って何をやっているの?」という疑問を持っているかもしれませんね。
この記事では、それをわかりやすく解説していきたいと思います!
目次 (クリックでジャンプ)
研究とは、納豆である
調べるテーマ・目的を決める
納豆についてどんなことを調べるか、そのテーマや目的をざっくりと決めます。
大学の研究室だと、それぞれ専門分野があって、その分野に関する研究が圧倒的に多いです。
- 納豆に最適な大豆の種類は何か?
- 美味しい納豆ができるための納豆の大きさはどのくらいか?
といったようなことから
- 納豆はどのくらい混ぜると美味しくなるか?
- どんな納豆のパックにすると賞味期限が伸びるのか?
というテーマまで、同じ “納豆” でもいろんな疑問が出てきます。
今回は、納豆はどのくらい混ぜると美味しく食べることができるのか?ということをテーマにして実験してみることにします。
ネットや文献で調べる
テーマが決まったからと言って、すぐに実験が始まるわけではありません。なぜなら、大抵の場合「思いついたテーマは誰かがやっている」からです。
だから、最初に決めたテーマはざっくりで構いませんし、変更することもよくあります。
調べ物をして、次のような情報を手に入れたとしましょう。
- 100回以上で美味しくなる
- 1,000回以上混ぜて、3時間置く
- 500回が最高。それより混ぜると美味しくなくなる
このように、出てくる情報にはかなりのばらつきがあります。正しいと思われる情報から、嘘の情報までたくさんたくさんあります。
これを見つけたら、次のステップに進みます。
試しにやってみる
上のようになんらかの情報が得られると、まずそれを自分で試してみることをします。専門用語で「予備実験」言われるものです。
あなたが理系の学生なら、学校の実験などで「再現性のあるレポートを書きなさい。」、「追実験ができるように使用器具などを明記しなさい」と言われることがあったと思いますが、その理由がこれです。
予備実験をしているうちに、あることに気がつきます。500回混ぜた時が一番美味しかったのですが…
というようなことがよくあります。
今までの実験では、納豆を何回混ぜると美味しいかの実験はされていたのですが、タレをいつ入れるかというのは誰も調べていなかったのです。
このようにして研究のテーマが決まりました。さて、いよいよ実験かというと、その前にやることがあるのです。
この時、仮説を立てる場合もあります。例えば、「納豆のタレはちょっとずつ入れるとよく混ざるから美味しいハズだ」みたいなことです。
評価指標、分析方法などを決める
実験のテーマは次のように決まりました。
ここで、実験に先立って大切なのは、「美味しさって何か?」というそもそも論です。
美味しさとは、つまるところ味覚の “感じ方” です。これはどのようにして測るかというと、例えば
- 実験協力者100人に食べ比べてもらう
- 味の化学物質を調べる
など様々な方法があり、しかもどんな人に食べてもらうか、どんな化学物質を調べるかでも変わってきます。
このように、実験にはどのように「分析」をするのかということが大切になってきます。
また、「どんな納豆を使うか」も大切ですよね。パックの納豆なのか、それとも自分で作るのか、大豆の種類はどんなものを使うのか、など考え出したらきりがありません。
このように「材料」にも気をつけながら、いよいよ実験のスタートです。
実験して結果をだす
さて、ここからやることはシンプルで、ただ「納豆を混ぜ続ける」ことです。納豆を混ぜ、タレを入れ、混ぜの繰り返し。
毎日毎日飽きもせず納豆を混ぜ続けます。
そして、分析・評価をしていきます。
皆さんが思い浮かべる「研究」というとこの部分だけかもしれませんが、ここまでにも色々な工程があることがわかったでしょうか?
たまに、「あの研究室はお金を持っている」とかいう話を聞くことがあるかもしれません。「それがどうした?」と思う人も多いと思いますが、実はとっても重要だったりするのです。
なぜかといえば、この納豆の例でいうと「納豆を混ぜる機械」があればめちゃめちゃ楽できると思いませんか?お金のある研究室はそういうことができるのです。
また、「納豆の味を分析できる機械」の精度が10倍違ったらどうでしょうか?
そう考えると、お金のある研究室というのはかなり大きなポイントだと言えるでしょう。
レポートにまとめる
さて、実験が終わったら、結果をまとめなければいけません。
ここで思い通りの結果が得られないと、再実験をする必要があります。
また、研究に先立って仮説を立てていた場合、その仮説に反するデータが得られた場合にはその原因や仕組みの解明に当たることになります。
それができたら、いよいよレポートにまとめます。これが論文に当たります。論文は図や表などを用いて、「自分がどんな成果を上げたか」について正確に書いていきます。
読んでもらう・発表する
最後に、書いた論文をいろんな人に読んでもらったり、発表したりします。最初は日本納豆協会、その評判が良かったら次は世界納豆協会での発表です。
こうして研究者のサイクルが終わります。こうして研究しているうちにまた新しい研究テーマが生まれます。例えば次のようなテーマはどうでしょうか?
このようにして研究生活は続いていくのです。
研究の面白さってどこにあったの?
えー、ここまでは大学の研究について書いてきましたが、こう思った人はいないでしょうか?
ですよね。研究の面白さってかなりわかりにくい気がします。
これも先生に聞いてきたので先生の個人的な答えと、僕が今まで会ってきた院生が語った「研究の面白さ」について紹介します。
自分一人だけが知っている喜び
例えば、僕がもし「納豆のタレを入れるタイミングは、200回混ぜた時に半分、もう200回混ぜた時にもう半分を加えて、あと100回混ぜると一番美味しい」という研究結果を得たとします。
これは、世界でまだ僕だけしか知らないことです。このような成果を出すことができる、というのが実験の面白いところらしいです。
今、すれ違った人は納豆の美味しい食べ方を知らないんだwww
と思っていると、めちゃめちゃワックワクらしいです。
努力が報われる研究発表
研究は根気と努力が必要とされる部分がかなりあります。また、すぐに結果が出るという訳ではなく1日ずつの積み重ねで新たな成果が生まれます。
この2ヶ月、半年やりきったという感覚が気持ちいいと感じることができればあなたはかなり研究向きの性格と言えるでしょう。
研究と開発の違いってなに?
さて、では「研究」と「開発」の違いはなんでしょうか?職業だと研究開発職など一括りにされることも多いですが、大学では基本的に「研究」をしているイメージです。
では、研究と開発の違いはどこにあるのでしょうか?
研究は、今やってきたようなこと
研究は、Research という言葉通り、調べることに力点を置きます。
だから、今さっきまでこの記事で書いてきた通り、詳しく調査したりそれを実験で確かめます。そこからさらにその裏にある自然法則を導き出したりします。
また、そのために研究では論文を読んだり先行研究を調べたりすることにかなりの時間を費やします。
簡単にいうと、アカデミック寄りだと思っておけば間違いないと思います。
開発は、研究を受けて美味しい納豆を作ること
開発は、研究で得た知見を活かして、「どうすれば美味しい納豆を作れるのか?」や「売れる納豆を作るにはどうしたらいいか?」などを考えます。
簡単にいうと、こちらはビジネス寄りということですね。
こちらはミーティングなどに時間を使ったり、今どのような製品が売れているのかなどの調査に時間を使うことが主です。
最後に:大学や大学院での研究は楽しいよ
ここまで、大学の研究は何をやっているのかについて説明してきました。少しでもイメージがつかめたでしょうか?
今紹介したのは大学の研究の大まかな流れと概要です。
本当はもっと複雑で色々あるみたいですが、研究室によっても違うみたいなので詳しいことはラボに配属されてから聞いてみるといいと思います!
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終わり。